
『翻訳する女たち』
大橋 由香子/著 エトセトラブックス
「外国語に堪能であることと、日本語への翻訳能力が高いことは必ずしも一致しない」とは、冒頭での著者の言葉である。なるほどと思った。私自身、海外作品を選ぶ時は翻訳者の名前を確認するからだ。自分にとって読みやすい文章の翻訳者だと、安心して読み進めることができる。
本書は4人の女性翻訳家について、インタビューを交えつつその人生を紹介している。共通しているのは戦争を経験していることと、幼少期から身近に本があったということだ。成長の過程で多くの本を読み、読書の楽しさを知ると同時に美しい言葉や文章に触れている。結果として、翻訳という仕事に結びついていった。女性の教育や社会進出が当たり前でない時代、彼女たちの努力や苦労はどれほどのものだったろう。
「翻訳とは何か」はもちろん、戦後の女性たちの生き様を知ることができる一冊。
那珂川市図書館(ひ)
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